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「皇居の宴席で純蘭を見つけたとき、驚いたよ。君はやせ細り、顔色も悪くて、とても辛そうだった。ああ、母と同じように純蘭は後宮で虐げられていると気づいた。純蘭を守りたかった。だから戦勝の褒美にと純蘭を妻にしたいと望んだ」
純蘭にとって、辛くてたまらなかった後宮での生活。だがそれも初恋の人に再び巡り合うために、必要なことだったのだ。
「純蘭を守りたくて妻にしたのに、俺を救ってくれたのはあなただったよ、純蘭。涙鬼の呪いから俺を解放し、人間の姿に戻してくれたのだから。純蘭がいてくれたから、どんな絶望の中にいても俺は生きてこれた。そして今こうして皇帝として、そして約束を果たす時が来た」
幼い頃に延徳に出会い、初めての恋を知った。求婚された喜びで、金色の真珠の涙を流した時から、純蘭の運命は始まっていたのだ。
「すべては延徳、いいえ、良誠様に再び出会うためだったのですね。異能の力をもっていたために苦しんできたことも、何度も何度も涙を流したことも、すべてあなたを救うためだった。そしてあなたを深く愛したことで、私の心も救われました……」
真珠の涙を流す異能の力をもったために経験してきた数々の苦労と辛い記憶が、純蘭の中で浄化され、癒されていくのを感じる。すべては愛する人を助け、救うために必要なことだったのだから。
「幼い頃に俺と出会ってしまったために、あなたを俺の運命に巻きこんでしまったのかもしれない。申し訳ないと思う。だから純蘭が許してくれるのならば、俺はあなたを皇后として迎えたい。そしてただ一人の妻として純蘭だけを生涯愛し、守り抜くと誓おう。こうして皇帝になれたのも、すべて純蘭のおかげなのだから」
「私だけを妻にすると約束してしまっていいのですか? あなたは偉大なる皇帝陛下。多くの妃をお迎えになる方のはずです」
「父上が多くの妃を娶ったことで、俺と葉延の因縁は始まってしまったとも言える。だから同じ悲劇を繰り返さないように、俺の代だけはせめて妻は皇后だけにしたい。純蘭、答えてほしい。俺のただひとりの妻に、皇后になってくれるかい?」
良誠からの求婚の言葉に、純蘭の目から喜びの涙がとめどなくあふれてくる。その涙はもう真珠となることはない。今の二人にとって、真珠の涙はもう必要な力ではないからだ。
「良誠様、今ここで幼い頃の求婚に答えてもいいですか?」
「ああ、もちろんだ」
「純蘭は、延徳の、そして良誠様のお嫁さんになるわ」
求婚の返事を聞いた良誠は、純蘭をそっと抱きしめた。
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