第一掛 生きてほしい

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「まぁまぁ!そんなことより希美!またフォロワー増えてたよ?」 「え?まじ?」  閑話休題、と言った感じで星那がスマホを弄り始める。タッタッと軽快にスマホを操作し、『ピクスタ』の私のプロフィールを見せてきた。 「ほら」 「うわ!ほんとだ!5000人超えてる!」  ピクスタの私のフォロワー数を見ると5012という数字が並んでいた。 「へー、そんなにいるのか」  この手の話題にあまり興味がなさそうにしている春斗も同じ画面を覗き込み、感嘆の声を上げた。 「やっぱりこの前出た雑誌の影響だって!」 「この前?」 「あー、ゴールデンウィークくらいに2人で原宿行った時にモデルのスカウトされちゃって…」 「え、初耳なんだが」 「いや、だって春斗そういう話題興味ないじゃん」 「まぁ…」  ピクスタは一般人からあらゆるインフルエンサーが集う、いわゆる写真投稿SNSの呼称。日々の生活や映えを意識した写真を投稿しているもので、私たちのような中高生にはなくてはならないものと化している。ここ最近それが大きくバズっていた。 「スカウトって…ついて行ったのかよ。怪しさ満点なんだが…」 「私も最初は怪しいと思ったけど…星那が乗り気になっちゃって」 「だってそんな機会滅多にないじゃん!」 「星那もスカウト受けたのか?」 「……いや、私は受けてないんだけどね」 「じゃあなんでお前が乗り気になったんだよ」 「だってだって!」  嬉々として言い訳をする星那に、春斗が的確にツッコミを入れていく。見慣れた光景に頬が緩んだ。 「というか、普通に危ないだろ。連れてかれていたらどうするつもりだったんだ」 「最悪私の健脚で逃げるつもりだった!」 「望月が置いていかれるだろ」 「もち、担いで」 「無茶なこと言うなよ、お前」 「まぁまぁ…最悪私もお母さんの名前出せば下手なことされないだろうなと思ったし」 「あー…それもそうか。…いや、そうか?」 「そうなの!てか聞いて、そのスカウトの人なんて──」  思い出し笑いをしながら、ずいっと言う効果音が聞こえるほど向かいあった席から星那が身を乗り出す。 「希美からお母さんのこと聞かされた時に『あの国民的女優、望月 朔良(さくら)の娘!?』なーんて声裏返っちゃってさ!」  スカウトの人の似ても似つかない声までしながら、私の母の名を言う星那はどこか誇らしげだった。
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