最終兵器不調

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最終兵器不調

 次のステージに向かって、アカデミー、ルグノワールの生徒達が、転移方陣に飲み込まれていった。 「最後のステージだ。西の大陸の諸島部の一角、風光明媚なロケーションが、まあ素晴らしい、今では、観光スポットにもなっている。ジラブルタルの、トロピカルステージだ」  おい。ジラブルタルは知ってるよ。  あれか?観光で来たお客達は、トロピカルな場所に、客席の娘っ子達と、リングの上で戦う娘っ子まで、見にゃならんのか?  どっちらけだぞ。それじゃあ。 「次の我が校の生徒は、ミラーズですな?彼女は毎回、ドリンクで雰囲気が変ります」  ああー。そうなんすか?  名簿で見ると、バネッサ・ミラーズという生徒だった。  バネッサの登場で、客席が歓声に包まれた。 「おお!今日はプリンセス風ですな?!」  ああ。キラキラしてんね?バネッサ。  ところで!お前等もう少し、うちの代表選手応援しろおおおおお!  マリルカ!暢気にサンドイッチ囓ってんじゃねえよ!  散漫とした観客に見えるように、いつものちっこいのが、テトテト歩いてきた。  ――はて?  向かい合うちっこいのとプリンセス風。ビクビクした審判役の教員がいて、遂に、選抜最終戦が始まった。  逃げていく審判役がいた。まあ、巻き込まれたくはないよな?  え?バネッサって、俺の上位互換のオールラウンダーか。  色々な初球魔法を駆使して、確実にユノの動きを止めに入っていた。  いや、普通なら、1秒で終わるはずなのに。  あれ?ユノが、大きく距離を取っていた。  何が起きた?ようやくうちの客席が、サワサワし始めていた。 「おかしい。ユノ様が、瞬殺せんだと?」  おい。今更、コロッと殴られると、すぐ死んじゃうって、あれなのか?  明らかに、ユノは本調子ではなかった。明らかに、動きに精彩を欠いている。  爆裂魔法の爆風で、バランスを崩して倒れた。  それで、俺は立ち上がった。 「コラああああああああああああ!ユノ!試合じゃ全力尽くすってのは、どこ行った?!あれだ!ユノ!ちゃんと勝ったら、ぎゅーってしてやるぞ!」  拡声魔法の、大声が轟いた。  再度、爆裂魔法が炸裂し、濛々と上がった煙が晴れると、そこには、すっくと立ったひまわりの姿があった。  え?え?え?何で?  ルグノワールの生徒達に、?が浮かんでいた。当然、バネッサにも。 「障壁魔法ですが、何か?」  ああ、いつものひまわりだよ。 「あれだな?サンチン立ちだ。防御の方で、ジェットコースターで戦うと、強い」  ガッタガッタに震えた、魔王が言った。  お前は何を言っているんだ。 「バネッサは、他の学校の友達ですが、同時に、ぎゅーってされたい、私がいます」  え?何で?無事なの?そんな疑問にお応えしよう。  だって、ひまわりだもん。 「えい」  縮地で消えたユノが、とん、と、バネッサを押した。 「んきゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ?!」  客席を越えて、水切りみたいに海を滑って、ぶっ飛んでいった。 「随分飛んだな?一応、救助に行かねば」  膝をガクガクさせて、魔王が立ち上がった。 「じゃあ、俺は、ユノを見に行ってくるよ」  俺は、控え室に向かった。  控え室に行くと、ユノが倒れていた。  お腹を押さえ、苦しそうにしていた。 「おい!ユノ!」 「・・・・ああ先生、ぎゅーっとお願いします」 「床に横になって、何してんだ?!ちょっと、見せてみろ」  俺は、ユノを抱き起こした。 「ぎゅー」  ぎゅーってしがったが、俺は、それ以前に、ユノの不調に気付いていた。  匂いで、一目瞭然だった。 「――ユノ?初めて、なのか?」 「――はい」  ユノは、初潮を迎えていた。  沈痛魔法()をかけて、暖めてやったら、ユノは元気を取り戻していた。  ところで、沈痛魔法、「セ」って、何だろう?  俺は、ぎゅーっと抱いた、ユノにうなじの匂いを嗅いでいた。  ポカポカとした、春の牧草のような、落ち着く匂いがした。 「先生、父にぎゅーってされるより、ドキドキします」  うん。心臓が、とく、とくって言っている。 「先生、生理っていうものについては、マリルカとかから聞いています」 「まあ、先輩だからなあ」 「先生?」 「うん?」 「私、もう、赤ちゃんが生めます」 「あー。そうかも、なあ?」 「じゃあ、次は先生が、頑張ってください」 「頑張――何を?」 「ええ。ですから、ルグノワールの眼鏡の若い先生との、試合です」 「あー、うへあ?!」  慌てて顔を上げると、ユノがにっこり微笑んでいた。 「先生なら、絶対負けません。試合やるって言っていた、校長先生が」  聞いてねえぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!ボケえええええええええええええええええええええええええ!  
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