部屋間違えた

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 大浴場の女湯の前で、娘っ子達は睨み合っていたのだった。  発端は、何か、肩がぶつかったとか、その程度のものだった。 「だあかあらあよおおおおお!肩ぶつかったんなら、キチンと詫び入れろやああああああ!」  ショートヘアーにメッシュのかかった、やんちゃっぽい少女がめっちゃ激おこしていていた。 「うるさいうるさいうるさい。詫びが欲しいなら、王宮に来なさいよだから。まあ、私いないけどね?」  流石というか何というか、マリルカが顔を出せば、全て丸く収まると思っていた。  だが。 「ああああああ?!王女がどうした?!王宮の王族ナンボのもんじゃ!私は北の大陸の!」 「あああ。併合統治する価値すらない場所じゃんか。カニでも食ってなさい」  マリルカは、てんで取り合わなかった。 「何よ?今度は何を揉めてるの?ミネルバ。あら、お久しぶりでございます。殿下?」  ふわっとスカートを膨らませて、割って入った少女は言った。 「ああ、マールシュタットのルクレツィアじゃんか。何か、山猿に絡まれてんだけど」 「山猿だとおおおおおおおおおおおお?!」  ミネルバと呼ばれた少女は、怒りの頂点に達していた。 「アカデミーの方ですわね?ミネルバ、小さい子を苛めては駄目よ?」  そこで、カチンときたのが、 「小さい子?見れば、さほど違いがないようですけど?貴女、お幾つ?」  アリエール・リトバールさんだった。 「ああごめんなさいね?昔から、ルグノワールで育っていたものだから、中央大陸には明るくなくて。私?15歳だけど。貴女、8歳くらい?」  ぶち。 「――はああああああ?この(わたくし)、アリエール・リトバールを、8歳?正気ですの?ルグノワールとやらって、一体どちらの田舎の山にあるのかしら?」 「――あら。中央大陸の南の端っこにある、田舎の学校よりも、文化レベルも標高も高いつもりなんだけど?ああそう。アカデミーと、今度対抗戦をやってお話だったのよね?まあ?!私?!王宮とは無関係だけど!一応侯爵の娘なのよね?!向かってきたぺちゃぱい幼女を!軽く降す理由だけはある!ああ楽しみね?!おーほほほ!」  ああ解った。お前、ぶっかます。アリエールは、無言でそう宣言した。 「ならば、早速ご覧になってはいかが?うちの、アカデミーの最終兵器少女を!ユノ!出番ですわよ!この無礼な山猿の集団を、軽く千切って差し上げて!」 「ユノ寝てる」  エメルダが、ぼそっと言った。 「はえ?!こんな時間に?!何故?!」  瓶を腹に抱えて、ユノは轟沈していた。 「ユノ!起きなさいまし!(わたくし)みたいに、軽く小突いて差し上げて?!お酒臭いですわよ?!」  無言で伸びた手が、アリエールのプチぱいをむぎゅっとやらかした。 「ふぎゃあああああああす!何をしますの?!ユノ?!」 「アリエールか。外れ」 「外れ?!何をして外れと仰るの?!」  気が付けば、ユノは獣のように跳躍し、マリルカとエメルダのおっぱいを、同時にむぎゅっとやった。 「ぎゃあああああああああああ?!何すんのよ?!」 「マリルカとエメルダのおっぱい。グッドOTT(お乳)。ビバ巨ちち」 「ユノおおおおおおおおおおおお!ゴラああああああああああ!」 「あ、でも、揉み方は優しい。先生直伝?」 「でも!おぼこじゃんか!」  俊敏に、周囲のクラスメイトのおっぱいを求める獣と化していた。  悲鳴が周囲に轟き、その様子を、慣れたって目でルクレツィアは見ていた。 「バネッサ?いる?」 「う、うん。いるよ?」 「ああバネッサ。また盛ったの?」 「――うん♡先生、凄かった。ヌカロクだった♡」 「ああ?!今日私の日じゃねえか?!ヌカロク?!だったら私はヌカハチだ!」 「まあ、バネッサの抜け駆けって、いつものことよね?もう出来た?」 「――うん。多分」 「で?先生は?!」 「どっか行っちゃった♡」 「ああ、あれよ?確か、支配人が、先生の知り合いの女だったはずよ?」  あああ。ミネルバは頷いた。 「やりまくりか。今頃。じゃあ、現場を押さえて一網打尽にしてやる!」  アリエール達を無視して、ミネルバ達は走って行った。 「では。殿下?」  余裕そうに頭を下げて、ルクレツィアも去っていった。 「何か、あんなのと戦うの?」  ゲンナリした、マリルカの姿があった。 「かます。かましてやりますわよ!あの女ああああああ!」 「あんた、社交に興味ないみたいだから言っとくけど、ルクレツィアって、あんたの親戚じゃない?エムの母方の姉の出自で。要するに大叔母の孫?」 「は?はえ?!お母様の?!でも、許しませんわ!8歳じゃありませんこと、教えて差し上げますの!それで!ユノまだ触っていらっしゃるの?!」 「先っちょ。先っちょコリコリしてる。グー」  おっぱいコリコリしながら、ユノは寝てしまった。  ああ、あいつ等部屋に戻ったのかな?  俺は、何とはなしに部屋を覗きに行った。  別に、そういう意図は全くなかったが。 「――あん?何この匂い?」  嗅いだ覚えのない匂いに混じって、アリエールのコルチゾール(ストレス)臭がした。 「ああ先生!温泉展開はございませんことよ?!どうせ!健全な湯気でよく見えませんし!」  望んでないけど、え? 「では!早速帰って色々決まますわよ!打倒山猿連合!ルグノワールに敗北を!」  え?あれ?帰っちゃうの?  だって、部屋取ったのに、キャンセルすんの?  俺、まだ温泉入ってねえし!  何か、知らない内に、ルグノワールへの敵意に満ちていた。
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