対抗戦始まる

1/2
前へ
/27ページ
次へ

対抗戦始まる

 ボン!ボン!と花火が上がって、対抗戦が始まった。 ー  やっぱり、初戦は団体戦だった。  初年級――つまるところ俺のクラスの生徒達26名。ルグノワール側の生徒は、5人のリザーブがいた。  へえ、あっちの生徒の方が多いのかあ。  って、え?リザーブの生徒、全員妊娠してない?  俺は、観覧席にいた、父親に視線を向けた。 「あら、エルネスト先生。ご紹介してませんでした?彼が、うちのアーサーですのよ?」 「初めまして。アーサー・メルクリウスと申します」  眼鏡をかけた、ヒョロそうな男だった。  初めまして。団体戦の主将、セレーナ・カーロス・ジョビンと申します。  少し息を飲んで、マリルカ王女は応えた。 「――で?あんたも?何ヶ月?」 「今、8ヶ月で、三児の母です」 「うきゃああああ!って言いたいんだけどね?流石に、この数は」 「そうですか?愛に満ちた、いい学校だと思いますが」 「っていうか、あんた、ダブり?」 「ええ。今、17歳です。初年級初日で授かり、出産後もまあ。王女殿下、ですね?ルクレツィアから、お話は聞いております。団体戦は、直接な戦闘ではありませんが、理論畑の生徒として、全力を出すことを誓います」  スイっと顔を寄せて、マリルカは言った。 「別に、妊婦殴らなくていいなら、まあそれはそれでいいんだけどさ。てか、あんた等、多分半分以上妊娠してんじゃんか。父親――誰よ?」 「勿論。うちの先生ですよ?」  ――は?  マリルカは、観覧席を見た。  ふうん、ルグノワールの先生で、俺みたいな魔法剣士じゃないのは、まあいいかもね?  ただ、お前、30人単位の、メスの匂いしますけど。  それと、妊娠中の教員の匂いまで。  そしてういおおおおい!団体戦の選手!ユノくらいの子まで妊娠してるよな?! 「エルネスト先生、お噂は兼々。貴方は、本物の英雄です!」  ああそうすか。俺は、君みたいにハタチそこそこで、そこまでしてませんが。  団体戦の課題の発表が、アカデミー側からもたらされた。 「案の定、課題は家造りじゃんか。校長、先に言っときなさいよ」 「カンニングは駄目だよ。マリルカ」 「ふん。よし!全員集合!ブリュンヒルデ!あっちのボテ生徒見てないで集合しろボケええええ!ボテ生徒見たけりゃ私を見ろおおおおお!でもバッタモンだしとかうるさい!」  空に、ダララっと銃をぶっ放した。 「みんな!設計図は私の中にあるから!みんなで協力して!カッコいい家建てよう?!」 「魔王いれば、一瞬だったのにね?」 「だから反則。でも、魔王さん、あれだけの規模の建造物を、いつでも一瞬で作れるのが凄い。強度計算も構造も、全部頭の中にあるんだね?」 「どうせもいいわ、あんな童貞。オラああああああ!お前等魔力高めろおおおおおおおおお!気張れよおおおおう!」  マリルカの、うるさい声だけが響いていた。  ふむう。審判やっていた、アカデミーのおっさん教員が、  見事な出来の3階建ての建物と、  出来の悪い掘っ立て小屋みたいな、うちの生徒の作品を、形容しがたい表情で見ていた。  アカデミー対ルグノワールの団体戦。  いいとこ無しで、うちは負けていた。 「ああでも、軒下の強度計算は、お見事です。キチンとした魔力があれば、そちらが勝っていたと思いますよ?」  ああそうすか。  ほぼ既定路線だし。団体戦がショボいのは。  もう、選抜チームしかない。  ヌルヌルにされて堪るもんか。  エロ顔で、エア右手を上下にしごいていたババアを、見ないようにしていた。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加