部屋間違えた

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 ――おや?彼女は?誰でしょうか?  今、温泉にいるのは、ユノとは気心が知れた生徒ばかりだった。  知らない生徒がいる訳がなかった。  だが、少女は、明らかに何かがおかしかった。  エルネスト先生なら、きっと気付いたに違いなかった。  明らかに、情交のあとの空気があったからだ。  明らかに、この少女は濃厚なメス臭を(たたえ)えていた。 「――うん?先生♡好き♡」 「誰ですか?先生って」 「えええ?!」  少女は、慌てて起き上がった。 「ひええ?!」  剥き出しになったおっぱいを、シーツで隠していた。 「あの、貴女は?どなたですか?」 「あ、あれ?先生は?」 「先生ですか。疲れてガックリ来ています」 「え?メルクリウス先生が?」 「いえ。エルネスト先生ですが」 「――え?部屋――間違え――ちゃった?」  ベッドから飛び上がって、散らばっていた制服を拾い上げた。アカデミーの制服ではなかった。 「あのー、貴女は?」 「あ、ああ!私バネッサ!バネッサ・ミラーズ」 「初めまして。イシノモリ・ユノです。遠くから来ましたので、名字が先になります」 「ユノちゃんっていうのね?本当にごめんなさい。お部屋、間違えちゃった」 「見たところ、問題ないようです。さほど汚れていませんし。私達は、アカデミーの生徒です。先生にお呼ばれして、温泉に来ました」 「あ、私、ルグノワール魔法学校の生徒なの。メルクリウス先生と、温泉に行くことになって」 「ああ。一緒ですね?その先生は、カッコいいお兄さんですか?」 「カッコいいっていうより、頼りない感じ?でも、多分今日ので」  はて?お腹に何が?  おぼこには、まだハードルが高かった。 「あ、バネッサ。その飲み物は?」 「え?ああ、ちょっと、先生を励まそうと思って。飲ませたら、物凄かったし」 「そうですか。ちょっと、いいですか?」  そう言って、ユノは瓶を取り出してクイっとやった。 「ああ、ルルコットのジュースみたいですね?美味しいでよ?ゲフー」  酒臭い息を、思い切り吐き出した。 「え?あれ?ちょっと、ユノちゃん、瓶、返してくれる?お酒、入れすぎちゃったみたいで」 「あああ。悪くねえな。お代りだ」  我々は今、妙な光景を目撃していた。 「ちょ、ちょっと、2本も飲んだら、先生みたいに」 「うっせえな。おい。ミンチにすんぞ?千早食らっとけ。人体消失魔法だ」  めっちゃ恐怖のひまわりの姿があった。 「ええええええええええ?!」  バネッサ・ミラーズの、恐怖の悲鳴が響いていた。
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