少女A子

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少女A子

「こんにちは!  ラジオこどもでんわ、そうだんしつ、マルミおねえさんです!  きょうのおともだちは『しょうじょAこ』ちゃんです。A子ちゃんの、なやみは、なにかな?」 「あの……。ゴニョゴニョ……は、つけられますか?」 「え?」 「ゴニョゴニョ……はいくらでつけられますか?  たかいですか?  おしっこのれんしゅうはつけてからしたほうがいいですか? なんねんくらいもちますか? いっしょうしゅじゅつがつづきますか?」  矢継ぎ早な質問を、マルミは優しく止めた。 「あの、ごめんねA子ちゃん。おねえさんは、たぶん、A子ちゃんのしつもん、わかるんだけど、おなじなやみをもってる子にも、わかりやすい、いいかたに、おねえさんがかえても、いいかな?」 「………」  プツン。ツーツーツー。 「あれ? A子ちゃん?」  ラジオは首都高の渋滞情報に切り替わった。  そのとたん、マルミは上司にどやされた。 「なにやってる!同じ悩みを持っている子なら、通じてる!悩んでないわからない子には、わからなくていい質問だろう!」 「す、すみません!」 「渋滞情報終わったら、フォローしろよ!」 「はい!」  マルミはメモ用紙になにやら書き出した。  渋滞情報が終わった。 「マルミおねえさんです。  A子ちゃん、へんなこといっちゃって、ごめんね。おわびにおねえさん、おうたつくったから、へたなおうただけど、きいてね。  いち、にい、さん。  ♪おつけもの~   おつけもの~   きゅうりに おなすに   おだいこん~   でも~つけられないものもあるね~   がっかりしちゃうけど~   できないことって   このよには たくさんあるから~   なんでもそうだから~   かなしまないで~♪  A子ちゃん、きいててくれたかな。  A子ちゃんと、A子ちゃんとおなじなやみをもってる子に、おうたがとどきますように。  ……ラジオこどもでんわ、そうだんしつ、きょうのほうそうは、ここまでです。  またね!  マルミおねえさんでよかったら、また、そうだんしてね!  じゃあね!」  後日、マルミ宛に葉書が届いた。つたない平仮名で『まるみおねえさん、ありがとう。いまはあきらめます。しょうらい、いがくがすすんだら、またそうだんのってください。しょうじょAこより。』と綴られていた。 「よかった……」  マルミは思わず出た涙をぬぐった。大人に相談しても無駄だ、とか、大ごとになるからもう相談しないほうがいい。そんなふうに思いこんでしまっていたら、どうしようかと心配していたのだ。 「おーいマルミー。そろそろブースに入っとけー。」 「はい!」  しばらく後、その日も放送が始まった。
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