0人が本棚に入れています
本棚に追加
少女A子
「こんにちは!
ラジオこどもでんわ、そうだんしつ、マルミおねえさんです!
きょうのおともだちは『しょうじょAこ』ちゃんです。A子ちゃんの、なやみは、なにかな?」
「あの……。ゴニョゴニョ……は、つけられますか?」
「え?」
「ゴニョゴニョ……はいくらでつけられますか?
たかいですか?
おしっこのれんしゅうはつけてからしたほうがいいですか? なんねんくらいもちますか? いっしょうしゅじゅつがつづきますか?」
矢継ぎ早な質問を、マルミは優しく止めた。
「あの、ごめんねA子ちゃん。おねえさんは、たぶん、A子ちゃんのしつもん、わかるんだけど、おなじなやみをもってる子にも、わかりやすい、いいかたに、おねえさんがかえても、いいかな?」
「………」
プツン。ツーツーツー。
「あれ? A子ちゃん?」
ラジオは首都高の渋滞情報に切り替わった。
そのとたん、マルミは上司にどやされた。
「なにやってる!同じ悩みを持っている子なら、通じてる!悩んでないわからない子には、わからなくていい質問だろう!」
「す、すみません!」
「渋滞情報終わったら、フォローしろよ!」
「はい!」
マルミはメモ用紙になにやら書き出した。
渋滞情報が終わった。
「マルミおねえさんです。
A子ちゃん、へんなこといっちゃって、ごめんね。おわびにおねえさん、おうたつくったから、へたなおうただけど、きいてね。
いち、にい、さん。
♪おつけもの~
おつけもの~
きゅうりに おなすに
おだいこん~
でも~つけられないものもあるね~
がっかりしちゃうけど~
できないことって
このよには たくさんあるから~
なんでもそうだから~
かなしまないで~♪
A子ちゃん、きいててくれたかな。
A子ちゃんと、A子ちゃんとおなじなやみをもってる子に、おうたがとどきますように。
……ラジオこどもでんわ、そうだんしつ、きょうのほうそうは、ここまでです。
またね!
マルミおねえさんでよかったら、また、そうだんしてね!
じゃあね!」
後日、マルミ宛に葉書が届いた。つたない平仮名で『まるみおねえさん、ありがとう。いまはあきらめます。しょうらい、いがくがすすんだら、またそうだんのってください。しょうじょAこより。』と綴られていた。
「よかった……」
マルミは思わず出た涙をぬぐった。大人に相談しても無駄だ、とか、大ごとになるからもう相談しないほうがいい。そんなふうに思いこんでしまっていたら、どうしようかと心配していたのだ。
「おーいマルミー。そろそろブースに入っとけー。」
「はい!」
しばらく後、その日も放送が始まった。
最初のコメントを投稿しよう!