届いて欲しい声

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 私は彼に自分の気持ちを伝えたかった。  彼のことを想うからこそ言わなければいけない。  彼のことを想像しては溜め息をついた。  しかし私は、いつかは言わなければいけないことだと思っていた。  私は彼にこの言葉が届くことを願った。  私は彼に会うと真剣な眼差しで告白した。 「家賃が半年も滞納しています。払わないならもう出て行ってください」  やっと彼に言えたと思っていると、彼が財布からお金を取り出した。 「大家さん。ごめんなさい。とりあえず一ヶ月分払います。残りの分は、また今度必ず払います」  彼がぺこりと頭を下げてお金を差し出した。 「わかりました。早めに支払ってくださいね」  私は一向に払わない彼から家賃を回収できた喜びで、天にも昇る気持ちだった。
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