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高鳴る鼓動を悟られないように、思いっきり悪態をつく。
「普通なら一糸先生の優しさに惚れ惚れするとこだろ」
「そんなわけないでしょ」
「……顔赤いけど」
「好きか嫌いかと訊かれたら、嫌いです」
そうだ、全然好きじゃない。
「正しい判断だと思いますよ。僕にとっても、生徒からの好意以上に面倒なものはないですからね」
そう言い切った一糸先生は穏やかに微笑むが、一糸春の本当の笑顔を見たことがある私は、この笑顔が営業スマイルなのだと知っている。辛辣なことを言いつつ、口調も態度も教室で顔を合わせている一糸先生そのものだから、手に負えない。
「一糸先生って見た目はいいのに、それでは補えないほど性格に難ありですよね」
「お前には取り繕わなくいいから助かるよ。つーか、一服したら作業に戻るぞ。カフェオレ貰ったんだから最後まで手伝えよ」
「はいはい、わかってます」
私の痛いところを突いてくるし、一糸先生は嫌いだ。
好きになるはずがない。
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