♯6 貰った分だけ……

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作業を始めてわずか10数分。ひとりの女子生徒から、至極自然な流れで話を振られた。 イベント前に盛り上がる話題といえば、大体決まっている。誰々くんを誘ってみるとか、後夜祭で告白するとか、せめて接点だけでも作りたいとか、それぞれに計画があるようだ。 「んー、たぶんカンナと一緒じゃないかな?」 「ウチはムリでーす」 隣で壁を背にだらしなく座っていたカンナが、生地カタログから視線を上げる。 「実行委員の忙しさナメんなよぉ?」 「そんな大変なんだ」 「ウチは委員なわけよ。他の人より責任あるし、当日も頑張らないと! でしょ」 見た目に反した真面目さに、思わず口元が緩んだ。 クラスメイトは『早速フラれたね』と笑い話へ変えるが、私としては、カンナの良さに注目して欲しいところ。 カンナの場合、外見の派手さが際立ってしまうけど、彼女の魅力はそこだけじゃない。整いすぎた顔のせいで敵も作りやすいが、敵になる女子は、決まって中身まで見ようとしない。 「ってことなんで、芙由チャンは他に回る相手見つけてね。たとえばぁ……」 「例えば?」 「陽平とか要とかさ。あ、この柄可愛くない?」 何を言うかと思えば。今回の班分けは裏ボス達を意識したわけではなく、ただの偶然だったのだろう。 切り替えるべく静かに息を吐き、カンナの横からカタログを覗き込む。 「……あと、はぎわら」 「えっ?」 ふいに聞こえた名前は予想外なもので、反射的に視線をカンナへ戻した。 「萩原達とかさ、中学ん時の友達って誘ってないの?」 「うん。楓とは連絡も取ってないし。別れたんだから、それが普通じゃない?」
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