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別れる以外、私にできることはなかった。そう打ち明けたらどんな反応が返ってくるか、簡単に想像できる。
本当のことは言えない。言いたくない。
「……私が自分の都合で動くのって、そんなに変かな?」
何も面白くないけど、全ての感情を打ち消して笑顔を作る。
たった2つだ。どんなに思いを巡らせたところで、当時も今も、私が守りたいのは楓とカンナだけ。
「そういうことじゃない。……せめて、相談して欲しかったって話だよッ!」
荒々しく言い放たれたカンナの胸中は、最も聞きたくなかった言葉――私の弱さを突く言葉だった。
楓の中にはまだ私がいる。その事実が、嬉しい。苦しい。イタイ。
カンナに見透かされていたことが、恥ずかしい。嬉しい。申し訳ない。
――これ以上は、もう抱えきれない。
「……なんで全部話さなきゃいけないの」
「え?」
「カンナには関係ないでしょ」
頭も心臓もやけに冷静で、自分のロッカーからバッグを取る余裕すらあった。
「芙由ッ!?」
カンナの声、周囲のどよめき、全てを突っぱねて教室を出る。
一応は夏休みだが、文化祭の準備に部活に、校内はどこも人が溢れている。ひとりになれる場所は、私が知っている限り一か所しかない。
相変わらず鈍く唸るドアを押し開けると、一面を覆う鮮やかな青空に目を細め、その熱気の中へと踏み入る。
「どうした?」
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