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「違うだろ」
「えっ?」
「何でも話すってのと、何でも話せるってのは違うだろ」
思わず先生の顔を凝視してしまったが、先生はどこを見るでもなく、ただ私の方だけは見ようとしなかった。
「それこそさ、榎本はお前の性格を理解してるだろうし。何でも話して欲しいわけじゃなくて、何でも話せる相手でいたいんじゃねーの?」
うまく言葉が出てこない。折り合いのつかなかった部分がほどけて、視界が潤んでいく。隣で澄ましている横顔が、風で揺らめくウェーブヘアが、キラキラと滲む。
私は一度目を閉じ、深く深く吸い込んだ熱気をゆっくりと吐き出した。
「カンナに酷いことしたと思いますか?」
「さあ。何があったのか知らないし、お前達の関係性をしっかり把握できてるわけでもないし、何とも言いようがない」
無責任なことは言えない、という意味だろうか。……私が知ってる“教師”って生き物は、そうじゃないんだけどなぁ。
「私達の関係性はたぶん、一糸先生と晴士さんに似てます」
「お前達と? 榎本が晴士?」
「そうです。似てませんか?」
何かが一糸先生の中でも合致したのか、すぐに表情がフッと緩んだ。
「私が一糸先生と同じ歳になったとき、2人みたいな関係でいたいです」
一糸先生のアトリエへ行った日、ほんの一時2人と同じ空間にいただけで、心を許し合っているのが伝わってきた。互いを理解しきっているような、繕う必要すらないような、特別な絆を感じた。
願望を口にするのに、躊躇いも恥ずかしさもない。これこそが本心なのだと思う。
「ふぅ」
――――え。
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