♯7 小さな変化

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カウンターに片肘を付いた一糸先生が、首を傾げるようにこちらを見る。 「部活組も講習組も、休みの日は来てるぞ」 「ああ! 文化祭の準備、夏休み中からやってたよねー。懐かしいなぁ」 このひりつく空気を晴士さんは感じないのか。 「文化祭って俺も行けるよね?」 「晴士うるさい」 「……私忙しいので、注文がないなら失礼します」 「待て。バイト何時まで?」 これは、私が負い目を感じているせいかもしれない。だが明らかに、今日の一糸先生には妙な威圧感があった。 「21時であがりです」 「あと5分くらいか。じゃあ、バイト終わったら例の公園で。すぐ済むから」 「え、逢い引き? 俺も行っていい?」 「だめ」 冷めた口ぶりで席を立った一糸先生が、そのまま店の外へと出ていく。 飲みかけのビールも、欠けたねぎまも置きっぱなし。唯一消えていたのは、灰皿横にあったタバコだけだった。 「今日ね、珍しくイットから誘われたんだ」 「えっ?」 「相談でもあるのかと思ったけど、(てい)よく使われたみたいだね」 晴士さんはビールジョッキに手を掛けながら、なぜか嬉しそうに微笑む。 「……晴士さんは、そんな一糸先生をどう思いますか?」 「イットらしいと思うよ。居てくれることが一番だよ、ほんと」 ん? さらりと返すわりに、どこか尾を引く言い方が気になった。 もう少し2人の話を聞いてみたい。そう思ったものの、私が切り出す前に、店主の声かけで定時を迎えてしまった。 「もしイットに苛められたら電話して。すぐに駆けつけるからね!」 「そのときはお願いします」
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