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「ましろ、由衣におじぎしてたね」
私の手の中から、ふわっと飛び立ったネコフクロウが、遠くの空を見つめながら言った。
「うん。すごく怖くて不安で悲しいはずなのに、ちゃんとしてた。だから、余計悲しい」
「ましろ、由衣に出会えて、よかったよ。そうじゃなかったら、永遠に彷徨ってた。ずっとつらかった」
「うん。彼のつらさ、私にも刺さってきて……。届けてあげたいって、すごく思った」
傍を飛ぶネコフクロウの頭をそっと撫でた。私の気持ちを汲み取ってくれる、相棒。
「時間稼ぎの道具に使ってごめんね」
「おやすい御用。由衣の魂送りのお手伝いがボクの役目だから」
「ありがと」
雪が、さっきよりも強くなった。
ネコフクロウの頭にも、うっすら雪が積もっていて、ほんのちょっと笑った。
「ましろ、ちゃんとお別れ言えたかな」
「大丈夫だと思うよ。ねえ、ボクらもそろそろ家に帰ろうよ。おばあちゃん、待ってる。現役退いてから、由衣の話聞くのが、唯一の楽しみなんだから」
「まあ、ね……」
自分の死に気づかず、寂しく漂う死者の魂を、最終電車で天上へ送るのが、代々受けついだ、私の仕事。
本当は、そんな悲しい魂に、出会いたくないんだけど……。
「由衣、帰ろう~」
「そうだね。……ああキミ、ねこでもふくろうでもなくて、すっかり雪だるまになってるし」
「ひどい」
すねる相棒を抱き寄せて、私は家路に向かった。
(了)
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