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懐かしい顔が並んでいる。
中学の同窓会。地元では老舗として知られる料理屋の座敷に並ぶ顔、顔、顔。さすがにここまで揃うと、それなりに壮観である。
あの頃、二十五年前。十四や十五の少年少女だった俺たちの顔は、いずれも四分の一世紀という膨大な歳月を感じさせるほどに変貌をとげている。
四十歳。俺もおまえも、あいつもそいつも、みんな平等に四十歳だよ。参ったね。
あの頃、サッカー部のエースでいつも女子からモテモテだった矢島はすっかり薄くなった頭髪と無様な三段腹のせいでまるで別人だし、クラスでいちばん可愛くて、やはり男子からモテモテだった佐々木愛奈は太ったアラフォーおばさんと化していて、俺を含めた男子一同を驚愕させている。
当時二十五歳だった担任の猿田先生はアラフィフの枯れたオヤジに変貌している。とはいえ猿田先生は元からして老け顔だから、元サッカー部エースの矢島の変貌ほどには俺たちは驚かされていない。
同級生らの容貌の二十五年分の劣化――いや進化と言おう――にはすぐに違和感などなくなり、みんなかつての仲間たちと同じ卓を囲み、昔にかえって、懐かしい思い出話に花を咲かせている。
「ひとりずつ立って近況報告コーナーといこうぜ」
誰かが余計なことを言ったのをきっかけに、当時の出席番号順に近況を発表する運びとなった。
「なんだ、俺からかよ」
出席番号1番の藍川が立ち上がった。
「名簿1番の藍川だ。誰に似たのか子供の出来が良くってなあ。家計が苦しいのに大学に入れちまったもんだから、金がかかってたまんねえよ。誰か金くれえ、金」
笑う。みんなが笑う。心をひとつにして笑う。
実際、ただの与太話だ。それでもかつて同じ時をすごした同級生のくだらない冗談は、他の何ものにも代えがたい。
「男子2番石川五郎。ぜんぜんモテなくて未だに独身だ。誰か助けてくれえ」
「石川ぁ、それは助けられんなあ」
猿田先生が野次を飛ばした。
みんなが笑った。
こんな調子で順番に近況を語っているうちに、あっという間に俺の番が回ってきた。
「9番、斎藤だ」
立ち上がって、名乗りをあげた。
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