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それよりも。
龍応会幹部の佐々木にとって佐々木愛奈は血の繋がった実の妹だ。勘当されて実家とは縁が切れたとは言え、骨肉の絆はそう容易く絶ち切れるものではない。いずれ必ず龍応会の佐々木は、妹の失踪を若原敦士と結びつけて考える。そうなれば若原敦士は消される。確実に。そして若原敦士が消えるときは、俺も消える。若原敦士だけが消えて俺だけが生き残ることなどあり得ない。俺は龍応会の佐々木に顔を知られている。俺は逃げられない。逃げ切れるものではない。ヤクザの情報網は広大だ。日本国内のありとあらゆる地域でヤクザの監視の眼は光っている。俺は消される。消されるのは若原敦士が先か、それとも俺が先か。あるいは同時か。
ヤクザを侮ってはならない。若原敦士と昵懇の警察は献上される金額次第では若原敦士を許すだろうが、愛奈の兄の佐々木は若原敦士と若原敦士の組織を絶対に許さない。妹の仇を討つべく、全力でもって若原グループを潰しにかかるはずだ。何しろ定年退職した刑事を毎年のように拐ってミンチにするような連中である。警察に対してさえそうなのだ。ましてや半グレの若原グループには遠慮も何もなく、ここぞとばかりに猛然と襲いかかってくるはずだ。
思い止まらせなくては。
若原敦士に、佐々木愛奈への遺恨を、復讐を、思い止まらせなくてはならない。
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