#07 恋とリトライの始まり

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#07 恋とリトライの始まり

 小夜(さよ)は元来、『思い立ったが吉日』な性格ではないと自覚している。  しかし、再びピアノに触れられたことで自信がつき、気持ちが前向きになった。  気持ちが上向くと、仕事もいつも以上に頑張れる。何もしたくないはずの休日の予定も立てたくなる。 「月岡(つきおか)さん、今日はなんかキラキラしてますね」  奏介(そうすけ)の出勤時間が近づき、受付でピンと背を伸ばした小夜を安坂(あさか)は眩しそうに眺めている。 「ありがとう」 「はぁ……」  ニコッと笑いかけると、彼女は世にも不思議そうな顔をして小首を傾げた。噂好きの困った後輩のことも、今日は何を言っても微笑ましく感じるだろう。  しばらくして奏介が自動ドアを潜ってくると、小夜の気持ちは今日一番に華やいだ。 「おはようございます!」  隣の安坂を上回る声量と笑顔で挨拶した小夜に、彼は軽く目を見張って固まった後、いつものように落ち着いた微笑みを返した。 「おはようございます。元気だね」 「はい! 社長も……」  そこで、パタリと小夜の声が止む。  ──社長も……?  一体全体この口は何を言おうとしたのだ。   ──かっこいいですね、とか?  にやけそうになる口元を手で隠す小夜を、奏介が不思議そうに見つめている。
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