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「 Edelweiß , Edelweiß……」
3年ぶりの弾き語りは、予想以上に骨が折れた。
歌はさておき、問題はピアノだ。指の関節が凝り固まりすぎて、弾くこと自体に苦戦する。
「駄目だー……やっぱりブランクが大きすぎますよね」
こんな耳も当てられない演奏なんて、弾かないほうがマシだ。小夜は恥ずかしさを隠すように苦笑したが、奏介は笑わなかった。
気まずさに黙り込んだ、次の瞬間。彼はふいに席を立ったかと思うと、背後から小夜の手に手を重ねた。
「っ……!?」
背中と腕、そして手に奏介の体温を感じて、急激に鼓動が速まっていく。
「そのまま続けて」
背中から、すっぽりと包まれているせいか、低く穏やかな声が耳のすぐ傍で聞こえる。
「Edelweiß , Edelweiß Du grüßtmich jeden Morgen……」
柔らかな歌声と優しい指先に導かれて、小夜は少しずつ感覚を取り戻していくのを感じた。
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Du grüßt mich jeden Morgen
《あなたは私に毎朝挨拶をしてくれる》
※ルビは耳コピです(。>ㅅ<。)💦
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