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U・F・O
突然の出来事だった。
太陽系外からの来訪者、数万隻余の星間航行船団が地球と月を結ぶ線上に忽然と姿を現した。最初に検知したのは重力波望遠鏡だった。
人類史上最初にして最大の地球外文明との邂逅は、世界中の国々で緊急事態として発表された。だが僕のように、頭から信じた者はごく少数だった。
「本当かな? 空のどこにも見当たらないけど」
「映像のひとつも出てこんし、虚報やろう」
目で視ることが出来ず、映像がまったく存在しないのも仕方のないことだった。宇宙船はどれも光や電波を反射しない物質で構成されていたからだ。
夜が来て、事態は一変した。
「月が、ない。消えてしまった」
僕は夜空を見上げ、「見えない大船団」が八日の月を完全に覆い隠しているのを目撃した。専門家の表現を借りるなら、「月が隠れて『見えなく』なることにより、地球との間に不可視の壁が存在していることが肉眼で確かめられた」ということだ。
「わしが間違うとった。ほんまに何かがおったんやなあ。……かんにんな」
友人たちは驚き騒いで電話をかけてきたし、SNSもパンク寸前になった。地球が一周する頃にはもう、未曾有の緊急事態を疑う者は誰もいなくなっていた。
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