山神ダンデム

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「はい?」  一瞬、自分の耳を疑った。  人ならざる者が、あの唐揚げを所望しているだと? そんなことがあるのか? いや、きっと聞き間違いに決まっている。 「ええと、もう一度確認しますね。あなたが所望しているのは、、で間違いないですか?」 「ああ、人間が言っていたので間違いない」  おれのことを揶揄っているのだろうか。  でも、こいつの機嫌を損ねて木に変えられるのも困る。  どうする? 唐揚げ買う? それとも逃げる? と、時間にして一分ほど悩んだあと、無駄な抵抗はしないことに決めた。 「じゃあ、唐揚げを買いに行きましょうか」  そう言って恐る恐るペダルを漕ぎ始めると、背後の何者かは「ホホホホ」と楽しげに声を上げた。 ◯  冬の夕暮れは早い。  時刻はまだ十六時を回ったばかりだというのに、農道には夜の風情が漂っていた。おれは神経を研ぎ澄ましながら自転車を漕ぐ。万が一後ろの何者かを怒らせてしまったら、おれは木に変えられてしまうのではないか———なんとしてもそれだけは避けたかった。 「すみません。危ないんでしっかり掴まってもらえますか?」 「おい。誰にものを言っておるんだ馬鹿め。わしはぞ?」 「だったとしても、万が一のことがあったら怖いじゃないですか。念には念をってやつです」 「ふむ。それは一理あるな」
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