5人が本棚に入れています
本棚に追加
「お前みたいに頭良くないんだよ俺はー!早慶狙えたくせにこんなフツーの大学に来た物好きなお前に、俺の苦労なんかわかるめえ」
「高校の頃から低空飛行だっただろお前はー」
ほんと、最初に条件提示されてるのに、何でそれをぶっちぎってデートしろデートしろなんて言えるのか。自分の都合しか考えない女なんて、結局のところ太陽に相応しくはなかったのだ。
まあ、太陽も良い社会勉強になっただろう。その後、いらぬ爆弾を残していってくれたことが問題だが。
「それで、俺がバレーボールって言ったら……バッグで顔面強打されて、痛くて呻いてるうちに部屋出ていきましたとさ。あれDVじゃねえのかよこの野郎。鼻折れたかと思ったわ。つか鼻血出たし」
思い出してまた鼻痛くなってきた、という太陽。
「暫くもうオンナはいいわー、正直トラウマー。……すげえ、段ボールにみっちり得体のしれない瓶詰の手作りホワイトチョコレートがみっちりつまってるんですけど。しかもドピンクの手紙が十二枚入ってるんですけど。保冷材も入ってねえ……」
「こっちよこせ」
「うい」
僕は彼からダンボールごと受け取った。瓶詰で、保冷剤もつけてないホワイトチョコレートなんてもう嫌な予感しかしない。ピンク色の便箋には、目が滑る文章がだらだらと。一番下には“ゆめかちゃんより”と書いてある。苗字もない。誰やねん、ゆめか。
手作りチョコだとはっきり書いてあるし、何が混じってるかもわからないし、保存方法も不安がすぎる。これはまとめて捨てた方がいいだろう。
「俺、チョコ嫌いになりたくない。チョコに罪はないのにさあ」
既製品のチョコとはっきりわかるものを脇に避けながら、太陽が悲し気に呟いた。
「なんで、こいつら俺にチョコ送ってくるんだよ。部室でもゼミでもSNSでも、バレンタインに贈り物はやめてくださいって何度も何度も言ってるのにさあ」
本当に、その苦労がしのばれる。僕はぽん、と彼の肩を叩いた。
「食えるチョコは俺も一緒に食ってやるから。あと、ラーメンおごってやるから元気出せ」
「琉衣、お前ほんとイイヤツ。二郎系行きたい」
「あいあい」
それと、この作業で彼の貴重な休みは半日潰れてしまうだろう。後でレポートも手伝ってやるか、と思う僕だった。
最初のコメントを投稿しよう!