きざはし

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「生まれ変わったら犬がいい」 カフェラテを飲みながらメイが言った。 窓際の席の僕が、ちょうど飼い犬と散歩する人を見ていたときだった。 「なに?転生システム?」 「うん」 「ぶはっ?」 冗談で言ったのにアッサリと返されて、僕はコーヒーを吹きかけた。 「猫に転生して野良猫になったら大変そうでしょ? でも犬は飼い犬だと幸せそうじゃん」 どんなに丁寧に愛された犬だって、メイの艶やかな黒髪に適わない。 その美しいストレートヘアーの先を弾ませてメイが笑った。 「メイは、人間でいるのが、嫌なの?」 「人間は嫌よ。勉強、仕事、結婚と独身の苦悩、 というか、いま、勉強がしたくない!」 「だからって転生までする?」 「する!せっかくある機会なんだもん、使わなきゃ勿体ない」 ねえ、トオルも一緒にどう?」 「えぇっ?」
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