きざはし

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伸縮自在のリュックを上着のポケットに入れて、手ぶらで歩ける。 リュックの中身は二十年ぶんを凝縮させた人工食、そしてお金。 砂漠の中に商店が点在していて、なにかしら買う為だ。 コイガネ国へ向かう者、別の国へ向かう者、それなりに人は多い。 僕は独り旅だけど、通信でメイと話すことはできていた。 カタル王国の王様が事情を話してくれたおかげだ。 『トオル、あたしが誘導するから、それで歩いていって』 メイはコイガネ国への経路をおしえてくれた。 昼と夜というものが無くて、腕時計の時間を確認して日数を知る。 身体が疲れると、適度な岩場をみつけて、その上で眠る。 そしてまた歩き出す。 それでも僕は寂しくなんかなかった。 『トオル、砂嵐がくる。今日は宿をとって歩かないで』 「わかった、メイ、ありがとう」 新しい両親、親切にしてくれた転移管理局の人、王様、友人。 あらゆる愛を背負って歩いている。 この二十年は始まりに過ぎないのだ。 メイの導きによって僕はコイガネ国へとたどり着く。 その使命を与えられた旅は、勇気を奮い立たせた。
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