きざはし

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砂漠にオアシスが点在している。 そこで食料や物質を調達するのだ。 屋台で食事をしていたら、メイが通信機で話しかけてきた。 「あたしのこと、いつ好きになった?」 「なんだい?急に」 「二十年かけて会いにきてくれる、そこまでの理由が知りたくなった」 えっと、メイは子供の頃は泣き虫で、両親がいないことが悲しくて 急に泣いていたよね。 僕はメイが泣き出すと頭をなでてあげた。 泣き過ぎて呼吸が苦しくなると、背中をトントンと軽く叩いた。 何か声をかけて慰めるとかしないまま、いつもそうしてた。 やがてメイは泣くより前に「頭なでて」「背中トントンして」と 僕にせがむようになった。 僕にされると落ち着くと言ってくれた。 僕は日に何度も頭を撫でて、背中をトントンした。 あるときにメイに聞かれたよね。 「トオルは親に捨てられたことショックじゃないの?」って。 僕は「メイと一緒だと寂しくない」と、返答した。 メイは泣きだした。 「トオルがいてくれるのに寂しくなってごめんね」って。 「誰だって親を欲しがって当然だよ」って、頭をなでた。 「トオルがいてくれるなら、それでいい」と、メイはまた泣いた。 僕はメイの背中をトントンした。 思春期になって男女として互いを意識するようになったけれど、僕らは 一緒に過ごしたね。 気づけばメイは泣かない子になってて、施設内の幼い子たちを世話する 立派なお姉さんになってた。 そんなメイは中学になってから苦手だった勉強が更に嫌いになって テストの日に学校をサボるときもあった。 僕は「メイと同じ高校に行きたいから志望校のランクを下げる」 と、言ったら、メイは慌てた。 「トオルと同じ高校にする為に勉強を頑張る」と、言ってくれた。 とてもとても嬉しかった。 勉強が、この世で最も嫌いなメイが、頑張ろうとしたんだから。 そのときだった気がする。 自分がメイに恋をしていると明確に意識したのは......。 それまでは、仲のいい兄妹みたいな感覚だったのに。 メイは「泣き出すあたしに、優しくしてくれた。ずっと好き」だと 言ってくれたよね。 僕たちは生まれたときから、恋におちていたんだと思う。 僕たちはそれにようやく気づいてキスを......。 『やだ!恥ずかしい!』 「あはははっ、自分でいわせといて、なんだよもう、こっちも照れたよ」
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