きざはし

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とりあえずと、僕はメイに案内されてコイガネ国の観光をした。 住むには、これほど素晴らしい国は無いだろう。 それでも僕には、タカル王国で待っている人たちがいる。 「あたしね、しばらくは精霊のままでいる。 転生は、もっと二人の生活が落ち着いてからでいいよ。 あたし、トオルの両親に会いたい」 「うん、メイ、帰ろう」 行き着くには時間がかかったけれど、国内にある転送設備は完璧で 統一している巨大コンピュータの許可がおりれば使用できる。 『人間、トオル。精霊、メイ。タカル王国への転送を許可する』 地下の管制室で音声が流れ、起動装置が点滅した。 「トオル、いつかちゃんと手をつなごうね、それから」 ムロの半透明な手が僕の手に重ねられた。 「それから?」 「キスより先のこともしたい」 「ちょっと!いまそれ言う?ドキドキして操作できない!」 「トオルは女の子のあたしのほうがいいでしょ? だからむやみに転生しないのよ」 「あああ、ありがとうっ」 「ほら、ちゃんと操作して」 「は、はいっ」 僕は、ありったけの願いを込めてタカル王国へと僕らを転送させた。
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