きざはし

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「あたしたちってさ、身内いないじゃん? 暮らしに不満は無かったけど、親に育てられたいって理想があるのよ」 そう言ってメイがカフェラテを飲み干した。 『あたしたち』そう、僕たちは児童保護施設で育った。 赤ん坊のときに施設の敷地内に置き去りにされた同士だ。 それで5月に捨てられていたから『メイ』と、名付けられて 10月に捨てられていたから『トオル』と、名付けられた。 それこそ物心ついたときからの知り合いで、気づけば恋人に。 高校2年の17歳同士になっている。 もちろん施設では大事に育ててもらえて、感謝してるけれど 別の意味では拭えない心の傷もあった。 「でもさ、転生したら僕たち、離れ離れになるんだよ?」 僕は不安だらけでコーヒーを飲み残している。 「そこは調べたよ。あのね、タカル王国って文明が進化してるの。 転生してから転生し直しも一回だけできるんだよ。 だからね、トオルと一緒に転生して、そこから転生し直したいの」 「そこまで?」 「うん、とにかく転生して、それから犬になりたい。 タカル王国では犬はみんな大事に扱われてるんだよ」 「すごい具体的!」
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