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「メイさんはコイガネ国にいます。そこで精霊に転生している。
ただ、行くには大変なんですよね」
と、転移管理局の職員に言われた。
タカル王国を治めるのは巨大コンピュータ。
平和を重んじて、球体のシールドに覆われ、どんな兵器でも
それは破られない。
国民は適性検査を受けた者たちで、危険思想は遺伝子レベルで
排除されている。
ドームで覆われた天井は癒しの青で、人々の心を鎮静化させる。
肥えた土で食物が育ち、永遠の陽気にまどろむ。
そんな夢のような国へ行けるのは、ごくわずか。
紹介された人と、呼び込まれた精霊のみ。
「トオルくんは遺伝子レベルでの適正は通っている。
ただ、行くには、どうしても二十年かかるんだ。
砂漠の真ん中にあって、国の仕組みで、外からは転移できない。
特別な高速車も砂塵のせいで故障するから走れない」
「二十年......」
タカル王国の国民の寿命は長い。
とはいえ二十年を費やす?
もちろん僕は、メイに会う為なら迷いは無い。
だけど、両親は?クラスメイトは?タッカーは?
そこには迷いがあった。
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