きざはし

8/24
前へ
/24ページ
次へ
「メイさんはコイガネ国にいます。そこで精霊に転生している。 ただ、行くには大変なんですよね」 と、転移管理局の職員に言われた。 タカル王国を治めるのは巨大コンピュータ。 平和を重んじて、球体のシールドに覆われ、どんな兵器でも それは破られない。 国民は適性検査を受けた者たちで、危険思想は遺伝子レベルで 排除されている。 ドームで覆われた天井は癒しの青で、人々の心を鎮静化させる。 肥えた土で食物が育ち、永遠の陽気にまどろむ。 そんな夢のような国へ行けるのは、ごくわずか。 紹介された人と、呼び込まれた精霊のみ。 「トオルくんは遺伝子レベルでの適正は通っている。 ただ、行くには、どうしても二十年かかるんだ。 砂漠の真ん中にあって、国の仕組みで、外からは転移できない。 特別な高速車も砂塵のせいで故障するから走れない」 「二十年......」 タカル王国の国民の寿命は長い。 とはいえ二十年を費やす? もちろん僕は、メイに会う為なら迷いは無い。 だけど、両親は?クラスメイトは?タッカーは? そこには迷いがあった。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加