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恭平が家に戻る途中、車中で電話が鳴った。
車のマイクに繋げる。
「もしもし兄さん、桔花に私の連絡先教えておいてくれた?」
「いや、俺の名刺渡した」
「やっぱり」
「やっぱりってなんだよ。それよりお前桔花が男だって何で言わなかったんだよ」
「ほら、そうなるでしょ? 桔花を好きになっちゃったんでしょ」
「あ、いや……」
「別に女だって言った覚えもないけど、お兄ちゃんが振られるのを見たくないから言わなかったのよ」
恭平はゲイだ。
「何故振られると決めつける。今まで俺に落とせなかった男はいないぞ。先に知っていれば違うアプローチを考えたのに」
「chiccaに仕事の依頼をするなんて思ってなかったもの。だけど城田兄弟がいるんだから絶対落とせないわよ」
「その兄弟だけど、兄の方は全然姿を表さないが海外にでも行ってるのか」
「聞けばよかったじゃない」
「いや、今日は彼に嫌われないように必死だったからな」
「珍しい。でも今回は仕事も桔花も諦めたほうがいいわ」
「どうして?」
「兄がいなくても弟だって相当なもんよ」
「ハハハ、そうだな。敵意丸出しで早速牽制されたよ。あの弟、今までわざと桔花の話を避けていたな。まぁ時間はある、ゆっくりやるさ」
久しぶりの恋の予感に顔がニヤける恭平だった。
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