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【 新しい出会い 】
【 新しい出会い 】
「私の部屋のデスクの上の封筒が必要なんだが、手が離せなくてね。桔花に会社まで持って来させてくれないか」
会社に着いたであろう時間に、将輝から電話があった。
「きっちゃん、パパが忘れ物届けてって言ってるけど、行ってくれる?」
「うん、会社でしょ? 三十分位で行けるよ」
「聞こえました? 行ってくれるそうよ」
「ありがとう、でも大事な書類だからタクシーで来るように言って。直接私の部屋まできて構わないから」
そう言って将輝は電話を切った。
「ああ、これだわ」
将輝の部屋から持ってきた封筒を桔花に渡した。
「大事な書類だからタクシーで来なさいって。呼んだからもう来るわよ」
「うん、わかった」
銀座にある『SHIROTA』の本社。
桔花は受付嬢二人に軽く会釈をしてそのままエレベータに乗った。
そして直接社長室へ向かった。
受付の一人が聞く。
「あの方、お名前頂かなくていいんですか?」
「ああ、あなた初めてなのね。桔花さんよ、うちのデザイナーさん」
「え? あんな可愛らしい方だなんて……会社のパンフレットには写真載ってないですよね?」
「そういえばそうね。たまに見えるからお顔覚えておいてね」
〝コンコンコン〟
社長室の扉をノックする。
「どうぞ」
笑い声が聞こえる。
『あれ、お客さんかな?』
「失礼します」
「ああ、桔花悪かったね」
中に入ると客が一人将輝と談笑していた。
桔花はソファに座る客に軽く会釈をして言った。
「これで間違いないですか?」
封筒を将輝に渡す。
「そうコレ うっかりしてしまった。ありがとう」
「じゃあ僕はこれで」
すぐに帰ろうとする桔花を将輝が呼び止めた。
「あ、桔花」
「はい?」
「紹介するよ。こちらアンジェリオの社長の……」
「初めまして安住恭平です」
その男は立ち上がり、スーツのボタンを留め直し右手を差し出した。
「アン……って結婚式場の?」
桔花も右手を出し握手に応える。
「……いやぁ ご存知ですか。嬉しいなぁ」
「あんな大きな会社知らない人いないですよ」
桔花はニッコリ微笑んだ。
「え……」
恭平はこの笑顔に落ちた。
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