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「だからせめて友人とか仲間には祝福されたいじゃない」
「そうですね」
「俺の場合は親の方が俺から離れて行ったけど、両親や親戚に祝福されないどころか邪魔される場合もあるんだよ」
「邪魔?」
「式場に来られないようにするとか、式自体を壊しにくるとか、その前に別れさせようとされたりね」
「ほんとに?」
「だから俺自身が『マイノリティが誰にも負けない場所』を作ってやろうと思ったんだ」
「……」
「理解されないで嫌な思いもしてきたよ、人に言えないような事もしてきたし。だから君の指輪ははそんな俺の陰な部分を打ち消す魔法なんだよ」
「魔法?」
「そう、もしそれが出来なかったとしても夢を見るには十分なものなんだ。実際彼等も俺も夢で終わったとしてもそれはそれでいいんだよ」
「……」
「うちの式場の外壁が必要以上に高いって気づいていた?」
「高い……とは思っていたけど」
「敷地が広いのはその外壁が式の途中見えない様に。こちらでどうするかはまだ決めてないけど、日本では同性婚の場合は誰にも絶対邪魔をさせない様に式当日には私服のガードマンも雇っているよ」
「恭平さんはホントに高い志でお仕事をしてるんですね。それを聞くと、僕はノホホンと生きてるな」
「いや、桔花は同性愛者じゃないだろ。女性と普通に恋愛できるんだからそんな事を気にしなくていいんだよ。それに実際俺と付き合いだしても誰も反対したりしないじゃないか」
「今まで違うと思っていたけど、僕が今まで好きになったのは尚くんだけだから、もしかしたらゲイなのかな」
悩む仕草の桔花に。
「……今キミがゲイかどうかより衝撃的な告白をされたんだけど」
「え?」
「桔花はやっぱり尚輝くんの事好きだったんだね」
「う、うん」
「それは向こうも?」
「僕はそうだと思ってたけど、勘違いだったかも」
桔花は尚輝の手紙を思い出した。
「あんまり言いたくないけど病院でね、尚輝くん桔花を迎えに行くつもりだったって言ってたよ」
「え?」
「これからは桔花の側にいられるとも言っていた」
「そんな話いつ」
「君が果物をカットしに行った時」
「それで、それで何て」
「気になる? 彼にゲイを公表して桔花を恋人として扱えるのかって言ったら、俺はどうなんだって聞かれて、俺は元々隠してないし、桔花が良ければ結婚したいと思ってるって答えたら黙ってしまったよ」
「公表なんてできるわけないよ」
「そうだよね。じゃあ君はずっと弟として彼の側にいるの?」
「違うよ、また違う世界に戻ってしまったんだから、もう尚くんの事はいいんですよ」
「ホントに?」
桔花は口元をナプキンで拭いて手を置いた。
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