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「ここよ」
薄いブルーで統一された部屋に通されると、雪と二人ベッドに腰掛けた。
「素敵ですね」
「あの時、僕はまだ何もお返事してなかったんですよ」
「そうね、まだラブコール中だけど自分は桔花を愛してるって凄かったわよね」
雪は一郎と顔を見合わせる。
「恥ずかしい……お母さん達は、抵抗ないんですか?」
「同性婚のこと?」
「ええ」
「私達が、あなたの恋愛にとやかく言うわけないでしょ。それより城田の両親はなんて言ってるの?」
「特に何も。ママは協力的です」
「だったら何にも問題ないんじゃない?」
「でも……」
悩みのありそうな桔花に雪は言った。
「他に気になる人がいるの?」
「そんなんじゃないけど」
「尚輝はどうなの?」
突然『尚輝』という名前を聞いてドキリとする。
「うん、無事に退院したよ。それからは会ってない」
「そう、桔花は尚くんっ子だったから堪えたでしょ。いなくなったあの時にも側にいてあげられなくてごめんなさいね」
「光ちゃんが、chiccaを立ち上げて忙しくしてくれたんだ。多分尚くんのこと忘れさせようとしてくれたんだと思う」
「桔花は誰にでも愛されてるのね、お母さん妬けちゃうわ」
「お二人が仲良ければ十分でしょ?」
「あら、寂しい。リタイア後は日本に戻ろうと思っているのよ。勿論あなたがいるからよ」
「そうなんですか? あの家に?」
「そこまではまだ考えてないわ。桔花、今日は泊まっていけるんでしょ?」
「はい、こちらが良ければそうするようにって」
「何よ、すっかりスティディなんじゃないの」
「そうですね、凄く大切にして貰ってます」
「夕食は済ませてしまったのよね」
「すいません」
「じゃあゆっくりお話しましょう」
すると桔花の電話が鳴った。
「もしもし、恭平さん? ええ、二人共元気です。泊まって行くことにしましたから明日そちらに戻ります。はい、おやすみなさい」
電話を切った。
「お二人に宜しくお伝えくださいと言っていました」
「よく気の付く人ね」
「そうですね。やはりお仕事柄でしょうか、大人です。それとお仕事への信念が凄いな……って思いました」
「あの結婚式場ね、こちらの人にもとても評判がいいのよ。彼、期待されているわ」
「そうなんですか、聞いたら喜びます」
「桔花はのんびりしているからああいう人がいいかもしれないわね」
「でも、僕はあの家を……というかママと離れる事はできないので」
両親は顔を見合わせた。
「そうね、彼と一緒になるとなると、あそこを出なければならないものね」
「尚くんがいなくなって寂しいママを置いてなんていけないし、僕も未だに色々お世話になっているから」
「安住さんに家に来てもらえば?」
「え?」
「そうしたら全部解決じゃない」
「一瞬いい考えに思えたのですが、彼は妹さんと同居されているんです。大きいワンちゃんもいて」
「そうかー」
「何とか考えます。お二人がそう言っていた事は伝えますね、ありがとうございます」
恭平との付き合いを二人が快く思っていることに安堵した。
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