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桔花は自分の携帯をポケットから出した。
「もしもし光ちゃん?」
困った時には光輝に頼ることが身体に染み付いてしまっている。
「話はわかった。安住がどこにいるのかはわかんないんだね」
桔花から全てを聞き終えた光輝は静かに言った。
「なっちゃんはそう言ってたけど、電話にもでないなら探しようがないよね」
「……なんとか考えるからもう少し一人で頑張って」
そう言って電話は切れた。
桔花はウルフの身体を撫でた。
「熱いな……光ちゃん早く」
問題事はいつでも光輝に言えば何とかしてくれる。
ずっとそうしてきた。
「僕は光ちゃんがいないと生きていけないんじゃないのか?」
一時間ほど過ぎただろうか、表に車の停まる音がするとインターフォンが鳴った。
桔花が出ると、そこには光輝が立っていた。
「犬どこ」
「あ、こっち」
少し不機嫌な光輝の後ろから白衣を着たドクターらしい人が入ってきた。
「獣医師さん?」
光輝の顔を見て言った。
「ああ、俺の友達の兄貴。移動動物病院やってるって聞いてたからお願いした」
「そうなの? よかった」
獣医師はすぐにウルフに近づき聴診器を当てたた。
「これは……すぐ入院させないと危ないよ」
「やっぱり……」
犬など飼ったことのない桔花でもそれは容易に想像できた。
「桔花?」
振り向くとそこに夏子が立っていた。
「なっちゃん大丈夫?」
すぐに立ち上がり夏子の肩を支える。
「インターホンが聞こえたから……お医者様?」
ウルフを取り巻く光景にすぐそう思ったのだろう。
「うん、ウルフ苦しそうだったから勝手にお願いしちゃった」
「飼い主さん?」
獣医師も立ち上がった。
「飼い主は兄なんですけど……」
「そうか、この子いくつだかわかる? 大きい病気はしたことはない? 薬なんかにアレルギーはない?」
夏子は色んな事を一度に聞かれてオタオタする。
「あ、あの……」
「大丈夫だよ、ゆっくりで」
桔花が背中を撫でた。
「ウルフは八歳です。大きい病気やアレルギーはありません」
「いつからこんな感じ? 何か原因が思い当たりますか?」
「あれ? と思ったのは一週間位前です。酷くなったのは二日くらい……かな。原因はわかりまえせんけど、きっと兄が帰ってこないからじゃないかと」
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