13th floor elevator

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 ウィーン。乗り込む女性。13階。ウィーン。閉まるドア。僕は15階から乗っている。14、13、12。彼女が乗って来ないと1階まで果てしなく長い。もう1回15階まで。また下りる。今日は2回目で乗って来た。ちょこんと頭だけ下げる彼女。視線はスマホ。僕の顔など覚えてないだろうけど、いつもこいつと一緒だなあとは思ってるか。それで良い。彼女が少し遅いと駅から会社まで猛ダッシュでたまに遅刻して怒られるのも、この神聖にして不可侵な彼女の清潔でふわっとした存在感の前にはどうだって良いんだ。装う偶然、平静。偶々いっつも時間が同じなんだ。彼女が閉ボタンをうまく押し損ねて数秒待って首を傾げた。 「今だ」  不自然に後ろの壁ギリギリに離れたとこから腕だけ伸ばしてボタンを押してやる。その時同時に彼女はその白くて小さい手を自然な少しだけ開いた感じで閉ボタンに向かわせる。 「あっ」  なんと官能的な声だろう。重なる僕らの手。 「すいません!」  ユニゾンするふたりの声。  実際には彼女は「あっ!」と違う慌てた声を出し見えない速さでボタンを押してしまい、ゆっくり迫る僕の手がボタンに届く頃にはシュパッと戻ってスマホの画面をスワイプしていた。僕は手を上滑りさせるみたいに空を切らせて必死に腰から傾いた状態を戻した。閉まるドア。運動の余韻に彼女の可愛い二の腕はふるふる小さく揺れている。  ガクン。    止まった。あれえ?階数を示すどのランプも点いてない。故障かな。黙って待つふたり。永遠にも感じる時間。ここぞと凝視する彼女の程よい尻が、左右斜めに細かく動く。なんだかもじもじしている。小さく足踏みを始めた。ピンと来た。尿意だ。股間もピンと来た。 「あの、大丈夫ですよ。僕は誰にも言わない。それに見ないし、音だって聴かない。においも口呼吸に切り替えて嗅がない。我慢は身体に毒です」  真っ赤な耳。振り返らずコクリ頷き彼女は室内の対角になる左隅にへたり込んでパンツを下ろすか下ろさぬか、  ジョォオオオーッ!ビチャビチャ  恥ずかしいのだろう。あちらを向いて白い尻を出して勢いよく噴射した。白いレースのロングスカートが汚れないようにたくし上げると、その輝く尻からもっと輝いて迸る尿。僕は全力で見て、聴いて、嗅いだ。  チーン  あ、もう1階。そんな妄想は開いたドアから逃げる様に足速に出ていく彼女の凛とした後ろ姿に儚く消えた。  ああ、あと1階、いや、あと1回上から下りてくる間に、僕の妄想はもっと広げられるのに。
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