君がこの世にいない未来

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瀬良友加里。僕が彼女とと出会ったのは高校一年生の春の事だった。 肩甲骨の下端くらいまである少し長めの髪を下げ、薄暗い赤色の広めの額縁の眼鏡を掛けた彼女は今どきの女子高生達とは違い、落ち着いた雰囲気を持ったクラスの中では地味な部類に入る少女であった。 住田と瀬良、名前の五十音が近かった僕らは、お互い席が前後になった。 四月に行われたクラスでの自己紹介の時間の中で偶然にも少しマイナーなロックバンドがお互いに好きであるという事実が発覚した。 その事実が僕らを引き付けあう些細で運命的なきっかけになったのだ。 それからお互い機会をうかがいながら一日に一度は会話を交わすようになった。 言葉の交差は二言三言の短いものであったが、会話を続けるうちに、僕らは必然的に引き付けられていった。 それは今となれば在り来たりといわば在り来たりな話ではあった。 しかし、社交性が人より少し欠如していて、青々とした不安定な日々を過ごす若すぎた僕らは運命的な出会いであると心の底から信じ切っていったのも無理はなかった。 この甘美で不安定な運命は僕らを暗澹とした破滅に向けて突き進んでいるとは気づきようもなかったのだ。 頻繁に会話を交わすようになった僕らは、共に放課後も時間を過ごすことが多くなった。 新譜を目当てに行ったレコードショップで思いがけず発掘した新しいバンド、人の役に立ってみたいと友加里が提案して行った初めての献血。 沈みゆく夕日を二人で見た海沿いの公園。 些細な彼女の新しい側面を知っていける日々に小さな幸せを感じるていた。 そんな些細で幸せな日々はこれから先も細々と終わることがなく続いていくものだと思い込んでいた。 そうだと信じていたかった。
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