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その日から僕は外に出られなくなった。
四六時中頭の中に後悔と自責の念が呪いのように渦巻き、僕の日々をくすんだ灰白色の世界から外に出ることを許さなかった。
殺した。僕が友加里を殺した。
興味本位の列車を待つ人間たちの興味本位の晒し者にした。
吐き気を催すグロテスクな見世物に仕立て上げた。
数秒前で真面目で、人思いで、しかし少し神経質な幼気な彼女を、直視するのも躊躇う吐き気を催す無機質な肉の断片へと変えてしまった。
そんな考えばかりが脳に固着し、食事をとっても吐き戻し、夜はやっと思いで眠っても甲高い汽笛の劈くような絶叫に直ぐに叩き起こされてしまうのだった。
事の顛末を知り、変わり果てた息子の姿を見かねた両親により僕は学校の近くの精神科に通院することとなった。
大量の薬を処方され必要最低限の摂食、睡眠はできるまで回復したものの、やはり元凶である友加里の死からは目をそらすことは許されなかった。
もっと時間をかけて話すべきだったかもしれない。
しかし、このことをどう話せばよかったのか?僕らの日々は終わる。
それ以上でもそれ以下でもなかったのだ。
僕は二度目の通院の帰り、例の駅のホームで列車を待った。
昼時なので列車を待つ人の姿はまばらで漂々と肌寒い風が暗闇の先から吹き込み続けている。
抜け殻のようになった僕は重い頭を下げながら黄色の警告線を穴が開いたように見つめた。
暫くするとホームに列車接近の無機質なアナウンスが響き渡った。
あぁ、あの時いつものように彼女の手を握ることができたら。
彼女は此処にいた……。
ふと脳内に救いの手が差し伸べられた。甘く、身を切り裂くようような悪魔の囁きだった。
此処で飛び込めば一瞬でこの苦しみから解放される。友加里の気持ちが少し解ったような気がした。
「まもなく列車が到着いたします。黄色い線の内側でお待ちください。」
二度目の列車の到着をアナウンスが心身摩耗によりに過敏に研ぎ澄まされた鼓膜に突き刺さりバクバクと心臓が波打ち始めた。
遠くから接近する列車の影を見捉えた。
ゆっくり、ゆっくりと足元の黄線を跨ぎ、前かがみに身がまえた。
その時、震える僕の手は攫む手の感触を感じた。
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