剣聖伝説 - 剣の誓い -(外伝2)

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 視界に映る閃光に目を見張った。  シシンを殴りつけていた頭目が首筋から血を吹き出し倒れた。  剣が流れを止めずに、両隣にいた野盗の腕を飛ばし、脚を斬った。  突然躍り込んできた剣士に、無防備だった野盗たちは慌てふためいていた。  その剣技はまさに神速で、次々と敵を斬り伏せていく。  襲うほうが襲われたのだ。  それでもすぐに野盗たちは広場に散開して体勢をととのえると、各々が得意とする武器を手にした。  二十をくだらない(はがね)(やいば)が、松明の灯りを不気味に照り返す。  シシンは自分を庇ってくれているイカルを見上げた。 「おい、動けるか? ここでくたばるつもりがないなら、脇によれ!」  イカルは視線を野盗たちに据えたまま、シシンに声を掛けた。  シシンが広場の端に這っていく。  その様子を確認すると、イカルは野盗たちの群れの中に踏み込んだ。  ――あんなの、俺には出来ねぇ……。  自分に突きつけられている多数の武器を前に、さらに一歩を踏む込む勇気をシシンは持ち合わせていなかった。自分は強いという自惚(うぬぼ)れはあった。しかし、シシンの得意とする突きは繰り出す動作が大きく、多人数を相手にできないことくらいは承知していた。  イカルという剣士は、死線をも軽々と越えていくように思えた。  武器が噛み合う音もさせず、イカルの剣は光の尾を引いて流れていく。  流れのあとには、野盗が転がっていた。  シシンは目の前の光景に震えた。  同じ剣士だから判るのだ。  御光流のイカルと名乗った剣士の技は、超絶としか言いようのないものだった。
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