剣聖伝説 - 剣の誓い -(外伝2)

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 ――ば、化け物か。  助けてもらっているのに、失礼な言い方だが、ほかに適当な言葉が思い浮かばない。  出し抜けに、「神妙にしろ!」「大人しく(ばく)に就け!」と怒鳴る声が響き、大勢の足音が聞こえた。  ――治安部隊か!  イカルの剣から逃れた野盗たちが地面に倒され、次つぎに縛り揚げられていくのが見えた。  シシンが首を上げているのも辛くなって、頭を地面に下ろしたときには、捕り物もあらかた終わっていた。  シシンのほうに足音が近づいてきた。  手前で止まると、跪いて覗き込む気配があった。 「おい、大丈夫か? 医者が必要か?」  シシンは仰向けになると、薄目を開けて、声の(ぬし)を見た。 「ふふっ、御光流のイカルか……。勝てる訳ねぇ……」 「お前、今回の全国剣術大会で優勝したらしいな。たいしたもんだ」 「優勝だぁ? これを見ろ、ざまぁねぇぜ。ただの酔っ払いさ」 「御光流の修錬場にも行ったのだろう? 師範から連絡があった」  シシンが頷いた。 「剣の筋は良いが、迷いがある。それを払拭できれば大成する――、と。あの師範の人を見る目は確かだ」  そのように自分に語り掛けるイカルのことを、シシンは知っていた。  王都守護庁の長官代理――イカル。 「御光流のあんたは、その剣術でいったい誰を守っているんだ?」  シシンの問いに、イカルは考える様子も見せず、「自分だな」と即答した。 「おいおい、笑わせるな」  シシンは、込み上げてきた笑いでからだが痛み、身を(よじ)った。  だが、ちらりと見たイカルは真顔だった。
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