剣聖伝説 - 剣の誓い -(外伝2)

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「すまん。王都守護庁長官代理のあんたなら、てっきり、王や国民や家族だ、と言うと思った」 「自分の大切なものをしっかり守るためには、まず自分が絶好調でないとだめだろう」  シシンには、イカルの言いたいことがよくわかる。  常に自分の持っている最高の身体能力を発揮できる者などいない。だから、修行者は自分にとって最高の身体能力が出せるよう常に努力しているのだ。 「ところで、あんたは剣聖だったよな……」 「そうだ――」  イカルは剣聖であることを否定しない。 「俺も、なれるかな、剣聖に……」  大地に横たわるシシンの目尻から大粒の泪がこぼれ落ちた。 「あきらめるな!」  イカルは、シシンの肩に手をあてて力を込めた。 「また会おう」  そう言い残すと、イカルは去って行った。  シシンは思い返す。  御光流との出会い、イカルの言葉、そして自分の未熟さ。 「俺は、目指すべきものを見つけた……」    これよりのち、羅秦国で海洋貿易が盛んになると、港街を海賊が襲うようになった。そのとき、ひとりの剣士が現れて、海賊の襲来から人びとを守ったという。  この剣士は『剣聖』と称えられ、後世、航海の守り神となった。
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