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シシンの子どものような反応に、師範は好ましげな笑みを浮かべた。シシンの、自分に真っ直ぐな性格を嫌いではないようだ。
師範が修錬場の弟子たちに仕合の場をあけるよう指示を出した。修錬場の中央に仕合の場が設けられて、その周りを取り囲むように弟子たちが座り込んだ。
師範が修錬場の中央に立ち、シシンを手招きした。
これにもシシンは驚いた。
多くの流派では、その修錬場の指導者は仕合の相手をせず、弟子の内から何人かを指名して、仕合をさせるのが通例であった。
まずは弟子たちにやらせて、相手の強さを値踏みするのだ。
御光流の対応は、異例中の異例と言って良い。
師範自ら相手になるということは、それだけ己の技量に自信があると言うことか。
二人は木剣を手にして向かい合った。
修錬場の空間が緊張感で包まれた。
周りに座った弟子たちは瞑想をしているかのように、半眼で息を調えている。
ならば、この張り詰めた空気は俺が生み出しているものなのか。
シシンも自分の息に集中し、調えていく。
師範が木剣を正面に構えた。
シシンもその動きに合わせて、正面に構える。
仕合は、既に始まっていた。
シシンの編み出した流儀の特徴は、槍に匹敵する遠間からの突きにある。
剣の間合いで仕合していると思い込んでいる相手は、遙かに遠い距離から急速に繰り出される突きに不意を打たれて、その場に沈む。
シシンは突きが極まるように、様々な技法を工夫していた。だから、遠間から突きが来ることを知っている相手であっても、突きを避けることは至難だった。
全国剣術大会の最後もこの技で決めた。遠間からの突きを警戒していた相手であったが、まともに喰らうことになった。
今回も、その必殺技を繰り出す機会を狙っていた。
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