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強い踏み込みで、足が地面にめり込んだ。
繰り出された突きが、相手の喉元を正確に捉えた。
その一撃の重さは、相手のからだを後方に吹き飛ばし、地面に叩きつける。
大地に伸びたからだが痙攣している。
慌てて救護班が駆けつけた。
シシンは仕合会場の真ん中に戻ると、担架で運ばれていく仕合相手を見送った。
「勝者、四神流剣術、シシン!」
勝者が発表されると会場に割れんばかりの歓声が沸き起こった。
しかし、シシンは歓声に応えるような素振りも見せず、一礼だけすると淡々と会場から去った。
「シシン、優勝おめでとう。これで、お前の剣術も羅秦国一を堂々と名乗れるな」
控室に戻ると、この大会中に親しくなった剣士がシシンに声を掛けてきた。
「堂々と名乗れるだって! ケッ! 全然、面白くねぇ!」
「だって、優勝だぜ。地方の仕合を含めると百万人を超える剣術家の頂点じゃないか。いったい何が不満なんだ?」
「お前は、これが本当に頂点だと持ってるのか?」
「違うのか?」
「この大会にまったく出場していない流派があるだろう」
「ああ、御光流のことか」
剣士が言うと、シシンが頷いた。
「言うな。あれは、別格というか特別だ」
「全国に名が通っているのに、仕合に出てこない。卑怯じゃないか?」
「なんだ、御光流と仕合をしたいのか?」
「おうよ。あいつらと白黒を付けないうちは、俺の編み出した剣術が最強だという証明にならねぇ。違うか?」
今度は、しぶしぶ剣士の方が頷いた。
「ま、そりゃそうだけどよ、やめといたほうがいいよ」
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