草刈り無双

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 フランクフルトに辛子つけすぎた。「外界」は高濃度酸素に適応した奴らしか住めない。いや、住むって環境はない。安住するならシェルター行けや。IKEA。  僕はカリスト、使い捨ての神様。ホントの神様たちは、シェルターで安穏と、しかし迫る危機に僕ら似非神を拝む。実際そんなお調子もんじゃねーだよ。  この「外界」で呑める店は貴重だ。しかしロクなもんは置いてねえ。合成酒に、カナヘビやらカエルやら蛇やら。このフランクフルトだって、爬虫類と虫だろう。辛子やケチャップがあるだけありがてえ。  さてなんで僕がこんなうらぶれてるか、だ。相棒が居ねえんだ。名うての「カリスト」な筈の僕は、相棒に機嫌を損ねられて草を刈れない。僕の「刈り」があまりにも理想論に偏り過ぎて、そいつを長年押し付けたんだからくたびれて当たり前だ。だから僕は相棒である「まみちゃん」を売りに出した。買い戻す金は無い。融通利かないとこはあるけど、彼女感度抜群だから一回試したらどんなカリストも夢中になるだろう。僕はそう思った。けれど二束三文だった。売った中古屋の話じゃエンジン掛かんないらしい。ウンともスンとも言わない。けど、僕が掛けると掛かる。それを見て、店主はヴィンテージ的な価値に賭けたみたいけど、買値は驚く程安かった。確かに僕に使い込まれてしょぼくれてはいる。それでもエンジンさえ掛ればあの感度。若い、ビンビンな奴にインサートされたらすぐに絶頂に達するだろう。  あれからなけなしの金を懐に代わりの相棒を探した。見た目の良いの、新しいの。でもフィーリングが合わないんだ。もう刈れない。カリスト失格だ。僕はこれから、どうやって生きよう。だいたい僕には神様なんて無理だ。たとえ似非神だって。演じる事なんて出来ない。財布に小銭。深酒でほうぼうに痛み。    死のうかな。  そんな気分で外界の集落をよろよろ歩いて居ると思わぬ声が掛かった。  「紫明の旦那!タダで良いからこいつを引き取ってくれ。どこをどういじってもウンともスンとも言わねーんだ」  ぼんやり眺めた先にはまみちゃん。 「わ、わかった。引き取ろう。コレ、少ないけど」   財布の中身を全部ぶちまけた。店主ははっきり蔑んだ表情を浮かべ「旦那、落ちぶれたもんですねえ。これぱっか何の足しにもなりゃしねえ」と言ったけど無理やり置いてきた。  僕には彼女をタダで引き取る事なんて、出来なかった。
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