渾身の一球

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渾身の一球

 話を聞いた川夏は、躊躇しながら質問をする。 「秘書官によれば、この直径23zmの白球では、地球を粉砕してしまう可能性もあると聞きましたが、それで真正の地球人は大丈夫なのですか?」  小曽根はニヤニヤして答えた。 「そのときは哀悼の意を公式に発表し、こちらは徹底した計算の下で適切な球の大きさを選んだと言えばいい。そもそも地球と同盟を結んでいる星は他にない。宇宙の惑星はすべて地球の蛮族が嫌いなのだ。真正の地球人に同情する星もあるが、それは蛮族どもと一蓮托生でもある。地球が壊れたとて、宇宙全体からの非難はない。それでも何かあるようなら、23zmという大きさを導き出した外交政策局長を罷免すればいい。誰かが責任を負えば、体裁は繕えるものだよ」  小曽根は改めて地球を寒冷化させる意義を話した。 「宇宙全体として、地球が不憫であるというのは共通認識だ。カネや利権により末期的惑星とまで言われている。太陽系から消滅させてやるのも、地球のためになるかもしれない。川夏君の投げた白球は、地球を救う神の一球となるのだ。読神巨虎軍のエースとしてではなく、我が星の球界のエースとして、地球にこの白球を届けてくれ。君の渾身の一球は、必ずや真正の地球人を救う奇跡となるだろう」  地球温暖化に同情した川夏は、白球を託され、立ち上がった。 「やります。渾身の一球を、必ず地球に届けます」  小曽根が安堵して頷く。 「では、秘書官とともに特設会場へ向かってくれたまえ。君の渾身の一球は、我が星の民が見届ける」 「はい!」  そして、川夏が特設会場へ向かった後、小曽根は別の秘書官に言った。
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