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 「なずな……」  私が泣き疲れてグスグスしていると、リビングの戸が開いた。  そこには、パパの姿があった。  そして、その背後には喪服姿の陽太が静かに立っていた。    「陽太……どうして?」  陽太は目を赤くして、唇を噛み締めていた。  「法要で見かけて、俺がここに呼んだんだ……」  パパは陽太の肩にポンと手を置いて、私をまっすぐに見つめた。そして、「二人でちゃんと話しなさい」と言い残してリビングから出て行った。    「なずな……」  陽太は、わたしの名前を呼んだきり何も言わず、手を差し出した。私をまっすぐに見つめる瞳は涙で潤んでいた。  あのことがあってから……ママがいなくなってからも、ずっと払いのけてきた陽太の手。  私は陽太の手のひらをじっと見つめた。    「支えさせてよ。なずなと出会ってから、俺にはなずなだけだよ。今までも、これからも……」  私は陽太の手から視線を上げて陽太の目を見つめた。  "自分の気持ちに正直に、素直になりなさい"  "自分の力で、幸せになりなさい"  ママの言葉が、私の背中を押した。  「……本当? 信じていい?」  私がそう尋ねるのと同時に、陽太は「信じろよ」と、私を抱き寄せた。  陽太の力強い抱擁、陽太の温もり、陽太の香りに不思議と癒されていく。    「どこにも行かないで……」「大好き」「寂しかった」「苦しかった」  素直な思いが涙と一緒に次々と溢れ出る。  陽太はウンウンと静かに頷いて、私の頭を撫でた。     ゆったりと時間が流れて、真っ暗闇だった心に灯火がともったように感じられた。  
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