プロローグ

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プロローグ

 「なずな、綺麗だよ。ママにそっくりだ……」  モーニング姿のパパが、目尻の皺を深くして優しく微笑んだ。  「パパ……今まで私をここまで育ててくれてありがとう……」  私が、涙ぐみながらやっとの思いでそう伝えると、パパは「……ん」と、短く返事をして鼻をすすった。  「それでは、ご入場ください」  ビシッとブラックスーツを着こなしたウエディングプランナーが、私たちに声をかけて目の前のチャペルの入り口の扉を開けた。  純白のウエディングドレスを身に纏った私は、親族や友達の祝福を浴びながら、パパと腕を組んでバージンロードを歩く。  一歩一歩を踏み締めて、パパとママに愛されてきた日々に思いを巡らせた。  そして、歩みの先には愛しの彼、陽太(ようた)の姿。  今日はガチガチに緊張して顔が少々強張っているが、いつもは穏やかで優しい人。  私が陽太の元へ行ったら、これからパパは独りきりだ。そして、いよいよその時と思ったら、私は最後の一歩が踏み出せなかった。  パパは、戸惑う私の背中を優しく押した。陽太は私の手を取って、キリッとした表情でパパに向かって深く頭を下げた。そしてパパもまた、深く深く私の夫となる陽太に頭を下げた。    パパが参列席へ着席するのを見送ると、その隣には笑顔で時を止めたママの遺影が私たちを見つめていた。  それでなくてもベールで視界は不確かなのに、さらに涙が溢れて世界が滲む。  陽太は再び私の手をギュッと握り、それからその手を引いて祭壇の前へ導いてくれた。そして、心配そうに眉を下げて、優しく慈しむように私を見つめた。真っすぐに、私を想ってくれているのが伝わる眼差し。  その陽太の真っすぐな瞳を見て私の心は凪いでいく。    ──ママ、私、幸せになるね。    私たちは、私たちの大好きな人たちの前で、永遠の愛を誓った。  
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