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エピローグ
「ただいま~!」
挙式を終えた後の四泊六日のハワイへのハネムーンから戻り、陽太と私はお土産のマカダミアナッツとコナコーヒーを携えて、実家へと突撃した。
「ただいまーってお前は……」
パパは私と顔を合わせるなり、呆れ顔でため息をついたが、どことなく嬉しそうだ。
「コンニチハ……ただいま……です」
陽太は、私の後ろでモジモジと落ち着かない様子でパパに挨拶をした。
「なにも、帰国してきてこんなすぐじゃなくても……陽太くんだって疲れてるだろうに、すまないね」
パパはそう言うが、顔が緩んでいるのが見てとれた。そして、しっかり私たちにお茶を煎れてもてなしてくれる。
チーンチーン
私と陽太は、ママの仏壇にお土産を供えて鈴を鳴らし、無事にハネムーンから帰ってきたことを報告した。
ママが亡くなって一年が過ぎても、やっぱり寂しくて、悲しいのは変わらない。
あちこちに散りばめられたママとの思い出が次々と色濃く呼び起こされて、それに触れる度に涙が零れ落ちて、つらくなることもしばしばだけれど、それでも時間と共に少しずつ穏やかなものになってきた。
ママとの思い出は、どこにいても不意に呼び起こされる。そして、優しく語りかけてきては、またそっと記憶の中に溶けていく。
残り一枚の"なんでも券"の使いみちは、ちゃんと守っていくよ。
私は、私の愛する人たちを巻き込んで、幸せでいるからね。
だからママ……安心して、見守っていてね。
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