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「ママ、いつもありがとう!」
五月の第二日曜日。
私は、昼間にパパと一緒に買ってきたカーネーションと、可愛い猫のイラストが描かれている小さな封筒をママに手渡した。
ママは一瞬、目を大きくしてから、ニッコリ笑顔でそれを受け取ってくれた。
パパはニコニコ顔で、優しく見守ってくれている。
「ありがとう、なずな。嬉しいな~……可愛いカーネーション! それと、これは?」
そう言って、ママは小さな封筒をていねいに開けた。
幼稚園生だった去年までは似顔絵のプレゼントだったけど、一年生になったから、今年のプレゼントはひとあじ違う。
それを見た時のママの良い反応を期待して、ついニヤニヤしてしまう。
「え~!? なんでも券?」
ママは期待通り驚いた様子で、それでいて珍しいものでも見たとでもいうように、ピンク色の折り紙で作った五枚綴りのそれを広げた。
つい最近、私はパパに"綴り"について教えてもらったばかりだった。その文字を見つけたのは日帰り温泉の券売機。
すごく難しい漢字だし、その意味も知ることができた私は、他の同級生よりもちょっぴりお姉さんになった気がした。
「ママのためになることなら、なんでも言って? お手伝いでも、肩たたきでも、足うら踏み踏みでもするから」
私がそう言うと、アハハ! と、ママが大きな口を開けて笑った。
「すごい! 五回もなんでも頼めるんだ?」
ママは、ニヤリと意地悪そうに笑って、私を見つめた。
私はそんなママの顔を見て、あわてて 「うん……でも、イジワルはしないでね?」と伝えた。
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