辺境の嵐 (剣と仮面のサーガ)

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 マガン軍はハイラルの中軍に当たっても勢いを衰えさせることなく突き進み、采配を振るっていたハイラル軍の総指揮官の首を刎ねた。  マガン軍は討ち取った首を掲げ、声も高らかに勝利を宣言した。 「みんな! 勝ったぞーッ!」  イカルも拳を天に突き上げた。  大将軍マガンが率いる軍勢に、総指揮官をやられたハイラル軍はあっけなく崩壊した。  マガンは、イカルの後ろに控える治安部隊の隊員たちやバンをはじめとする村人たちを見渡し、「皆も、よく耐えてくれた。王家の直轄領に許可なく領土の兵を入れることは立派な反逆行為である。おかげをもって、王の領地は守られた。王に代わって儂から礼を申す」と、マガンは頭を下げた。  大将軍から頭を下げられた村人たちは、どのように応えればよいのかわからず、あわてて跪いて額を地面に付けた。治安部隊の隊員たちは敬礼姿勢のまま硬直している。 「おいおい、そんなに畏まらずとも良いわ。後始末はこちらでする」  おい――、と言って、配下の兵に酒樽と食糧を運ばせた。 「それよりもな、連日の緊張でつかれているであろう。イカルも、治安部隊のお前たちも、村人とともに存分に休め」  マガンからの思いも寄らぬ心遣いに、さらに叩頭した。 「これは大変なお心遣い、何よりでございます。ところで、閣下、後の始末はどのようになさいますか? 必要であれば、わたしたちもお手伝いしたく存じます」  イカルが村人たちの意を汲んで、尋ねた。 「なぁに、いまからハイラル辺境伯のアホ(づら)を拝みに行くのよ。軍勢の運用はトロいが、逃げ足は速そうなのでな」
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