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はっはっは――、と大笑すると、マガンは配下の騎馬軍団を従えて、ハイラル領に入っていった。
「……ごっつい御方ですねぇ」
イカルにからだを並べたバンが深く感じ入った様子でつぶやいた。
「いや、身長はバンと同じぐらいだぞ」
「身長のことじゃぁございません。人物って言うか、醸し出す雰囲気って言うか……」
「ああ、あれか――あれが人の器というものだ」
その夜、村は宴会で賑わった。
翌日、イカルとバンは街道を歩きながら村の被害状況を確認した。村は壊滅状態だった。
バンはイカルに村人たちを雇ってもらえないかと頼み、イカルはその申し出を受け入れた。
こうしてハルス村は地図から消え、イカルは羅秦国で最強の諜報部隊となる母体を手に入れた。
「バン――前を見ろ」
イカルの声に、バンは街道の先を凝視した。
はるかに向こうから、一乗の馬車がやって来た。
やがて馬車は二人の目の前で止まった。
馬車から最初に降り立ったのは、手紙を持たせた遣いの者だった。
その者が手を貸して、馬車から降ろしたひとを見て、バンが転ぶように駆け寄った。
スイリンを胸元に抱いた妻のヒエンだった。
バンは両腕をおおきくひろげて家族を包み込んだ。
スイリンの朗らかに笑う声が聞こえた。
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