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と声をあらげて、イカルを取り囲んだ。
「街道を歩いているだけで、怪しい奴とは、失礼なやつらだな。その格好、お前たちはハイラルの兵だな。ハイラル辺境伯の兵士が王家の直轄領の村に何の用だ。そっちのほうがよほど怪しいぜ」
イカルは兵士たちの身につけている甲冑から辺境伯の兵士だとすぐにわかった。
「うるさい! 無礼なやつめ、始末してくれる!」
兵士たちが手にした武器を一斉にイカルへ向けた。
槍が二本に剣が一振。
イカルを中心にして、三角に取り囲んだ。
イカルはまだ剣を抜かない。
心の中で、彼は自分の信念を再確認していた。
「己のなすべきことを成せ」と。
緊張することもなく、ただ自然体で立っていた。
イカルのあまりにも泰然自若とした態度に、兵士たちは戸惑ったが、武器を向けた以上収まりが着かず、包囲の輪を狭めていった。
槍を手にした兵士が背後に回り、攻撃の間合いに入った。
イカルの背後から、槍の突きが襲う。
すでにイカルはその場所から消えていた。
からだを反転させ、槍をたぐり寄せつつ、兵士の側面に付くと、首筋に手刀を打ち込んだ。
兵士が崩れ落ちたとき、イカルの手には槍があった。
仲間の倒れたのを見て、剣を持った兵士が慌てて攻撃してきた。
上段からの単調な打ち下ろしだった。
しかも剣の間合いとしては遠すぎる。
つまり何もしなくても当たることはない。
イカルは槍で剣を叩き落とすと、兵士は勢い余ってたたらを踏んだ。
体勢の崩れた相手の喉元に、イカルは槍の石突きを差し込んだ。
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