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兵士は蛙が潰れたような奇妙なうめき声を上げて、後方に吹き飛んだ。
「さぁ、どうする? やるか?」
イカルは最後のひとりにわざと隙を見せて誘いを掛けた。
槍を持った兵士は簡単に誘いに乗ってきた。
イカルは槍先を兵士の手元に押し込んで手首を斬る動きをして見せた。
手首を落とされると思った兵士は槍を握る手を放した。
イカルは自分の槍で、兵士の槍を絡め捕るように引き寄せると、外へ弾き飛ばした。
勢いそのままに槍を旋回させ、兵士の顎を打った。
兵士は頭を震わし、白目を剥くと、膝から崩れ落ちて、地面に伸びた。
イカルは兵士たちの帯をとって、手足を縛っていった。
最後のひとりを縛り揚げたところで、横合いから声を掛けられた。
「あのぉ、剣士様。たいへんお強くて結構なのですが、兵士さんたちを懲らしめなさって、大丈夫ですかね?」
イカルが声のした方へ顔を向けると、村人たちがへっぴり腰で立っていた。
事情を聞くと、ハイラル辺境伯は国の専売となっている塩の権利書を狙って、村長一家を拉致したらしい。
このハルス村はいまは行商人の村として存在しているが、羅秦国建国当時は諜報部隊として活躍していたらしい。
その報酬として、塩の専売を免除され、村から産出される岩塩を売って諜報活動に充てることが許されていたようだ。
ハイラル辺境伯の行動はその権利書を手に入れようとしたものであった。
先の大雨でこの村の上流に堰止湖ができていた。それと同時に新たな岩塩が発見されていた。これを売り払うつもりらしい。
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